水はなんにも知らないよ
少し前に「水からの伝言」や「水は答えを知っている」といった本がはやりました。「水に綺麗な言葉を書いた紙を見せると綺麗な結晶を作る。汚い言葉を書いた紙を見せると崩れた結晶になる」という内容が書かれた本です。普通に考えて全くありえない話であることはすぐわかりそうなものですが、このような本が売れていたとしても、これだけであれば世間によくあるトンデモ本の一つがまたヒットしている、といった程度だったのかもしれません。
これらの本のケースが普通と少し異なっているのは、「水からの伝言」を使った道徳教育が一時期小学校で広く行われていたということです。授業の内容は以下のようなものだったようです。
- 児童に対称性の高い結晶の写真と、対称性がくずれた結晶の写真を見せる
- 前者が「ありがとう」と書かれた紙をビンに貼り付けた水の結晶であること、後者が「ばかやろう」と書かれた紙をビンに貼り付けた水の結晶であることを説明する
- 「水は美しい言葉と悪い言葉を理解しており、美しい言葉を見せると綺麗な結晶が、悪い言葉を見せるとくずれた結晶ができる」、と児童に教える
- 「人の体の70パーセントは水でできている。誰かに悪い言葉を使うと、その人の体の水に悪い影響を与えてしまう。だから人に悪い言葉をかけてはいけない。」、と児童に教える
「人に悪い言葉をかけてはいけない」ということを道徳の授業で児童に教えることは基本的に良いことだと思いますが、その結論に至るまでの論理ははっきり言ってデタラメです。ですが驚いたことに、かなりの割合の小学校教師はこれがデタラメであることが理解できず、「水からの伝言」をそのまま授業に使用していたようです。
「水からの伝言」「水は答えを知っている」に対する批判や、こういった本を授業に用いることに対する批判を掲載した HP や書籍などはいくつかあるようですが、平易に書かれておりお勧めできるものは「水はなんにも知らないよ」(著:左巻健男)でしょうか。興味があるかたは是非ご覧ください。
波動水・磁化水・マイナスイオン水・トルマリンなどなど、水関連の怪しいビジネスが一刀両断にされております。「pHの影響があるため、水のクラスターサイズは NMR では測定できない」など、昔、自然科学系の研究者だった私も恥ずかしながら知らなかった話題などあり、なかなか楽しめます。





